回復期リハビリテーション病棟で働いている嫁さんを持つ、作業療法士の立場から「回復期リハビリテーション病棟での看護師さんの役割」について考えてみたい。教科書的なことではなく、作業療法士として27年働いてきた経験をもとに書いてみる。
※2017年10月27日追記
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回復期リハビリの患者さんのこと
基本的には骨折とか脳卒中とかの患者さんがメインとないます。「回復期」という名称からもわかるとおり病状の安定した患者さんがほとんどなんです。時々急変する患者さんもおられますが、基本的には皆さん病状が安定しておられます。
ということは、急性期のような医療的な処置がたくさん必要な患者さんはおられません。
回復期リハでの看護師さんの仕事・役割
医療的な処置というと点滴、褥創、胃ろう、気切などの処置が中心になるかな。
そういった業務よりも、ADLへのかかわりが看護師さんの業務のメインとなっています。嫁さんが言うには
- 車椅子とベッド間の移乗介助
- トイレ介助
- 入浴介助
- 食事介助
- 更衣介助
- 洗面介助
といった日常生活へのかかわりが中心。これが、看護業務の位置づけとして看護師さん的にどうなのかってことは作業療法士の私にはわからないです。
- こういた業務がメインとなるような勤務はいやだ
- もっと医療的なかかわりがしたい
ってかたにはあまりお勧めできないかな。
回復期リハ病棟でのリハビリのこと
回復期リハビリテーション病棟が他の病棟や病院と大きく異なるのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリテーションスタッフが他の病院に比べて多く配置されていることだと思います。看護師さんの中には、
回復期リハビリテーションの中心はリハビリテーションだ!
って思っておられる方も多いともいますが、それは間違っていると思います。
たしかに、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がマンツーマンでリハビリテーションを実施します。2017年時点では、患者さんの状態や年齢、疾患種別によっては理学・作業・言語の3種類のリハビリを最大1時間ずつ、合計3時間のリハビリを毎日受けることができます。平均すると6単位前後のリハを受けている人が多い。だからリハビリスタッフがメインだと考えておられる看護師さんも多いことでしょう。
でも、よく考えてみてください。最大でも1日のうち3時間しかリハビリテーションは受けることができません。残りの24時間の生活のうち残りの21時間は病棟で過ごすことになるのです。21時間の対応をしているのは理学療法士でも作業療法士でも言語聴覚士でもなく看護師さんなんですよ。
他の病棟区分に比べると確かに回復期リハビリテーションで受けることのできるマンツーマンのリハビリの時間は多い、それでも3時間なんですよ。残りの時間は病棟で過ごすんです。だから、その病棟で過ごす看護師さんの関わり方が患者さんの与える影響はものすごく大きいのです。
患者さんの実際を伝える!
リハビリの時間以外の患者さんの様子を詳しく知っている理学療法士や作業療法士、言語聴覚士は少ないのです。
マンツーマンで1時間も時間があるリハビリの時間に理学療法士や作業療法士、言語聴覚士さんとやっているときにはできているADLも実際に病棟での生活の時間に実践できる動作は少ないのが現実です。いわゆる
「できるADL」と「しているADL」との差です
生活の中で実践しているADLは「しているADL」と表現されます。リハビリの時間など比較的整った条件の中で患者さんが発揮できる最高のパフォーマンスで行うADLが「できるADL」です。
リハビリの時間に実施できている「できるADL」をいかに日常生活で実践できる「しているADL」に近づけていくことができるかどうかって言うのが病棟看護師さんの果たす大きな役割なんです。
リハビリスタッフの多くは足しげく病棟での患者さんの状態を観察することはないのとちゃうかなあ。そうすると、リハ時間の「できる」動作しか見ていないので、実際の病棟での患者さんの様子に気づかないんですよね。
まずは、「病棟のでの患者さんの本当の姿を担当のリハビリスタッフに伝えること」が看護師さんの大きな役割の一つになってきます。
ADLの改善に取り組む
作業療法士の立場から回復期リハビリテーション病棟の看護師さんに取り組んでほしいADLへの取り組みについて書いてみます。
- 患者さんが本当にしている動作を把握する
- できない事のうち、もう少しの支援でできそうなADLを把握する
- できないADLへの支援を行う
- リハビリスタッフへ情報発信する
患者さんが本当にしている動作を把握する
普段の病棟でのADL動作を確認しましょう。これが最初に行う評価です。
- 一人で安全に実施できる動作
- 一人で安全に実施できるが時間が非常にかかる動作
- 一人では安全に実施できない動作で介助量が非常に多い
- 一人では安全に実施できない動作だが介助量は少ない
この中でどれに対して支援していくべきだと思いますか?
まず取り組むべき対象は4だと思います。介助量が少ないということは、短期間で自立できる可能性が大きいからです。「2」とか「3」については担当のリハビリスタッフと協力して取り組むべき課題です。このように、取り組むべき課題の優先順位をまず設定することが必要となってきます。
できないADLへの支援
できないADLをできるADLへと変化させることが、早期に患者さんが退院できることにつながるんですよね。回復期リハビリテーション病棟で働く看護師さんにとって最も重要な業務だと思います。
できないADLへの支援の考えかたですが
- 環境の工夫や動作手順の工夫
- 福祉機器や道具の利用
- 介助方法の変更や変化に応じた介助量の軽減
といったことに取り組むことになるのではないでしょうか?
環境や動作手順の工夫
環境というのは、たとえば移乗動作のときの車椅子の位置を変えるとか、食事動作のときのテーブルと車椅子の位置関係や、食器の位置のセッティングなどなど、動作時の状況や環境を調整することで介助量の軽減を図ることです。
動作手順の工夫としては、更衣動作などの順序を工夫することで介助量の軽減を図ったりすることです。
環境を変えることでADLが変化する方はけっこう多いんですよね。看護師さんにとってもお手軽に実践できる方法なので、まずはいろいろ試すことが重要です。
ここでの発想の違いが業務量の軽減につながります。
福祉機器や道具の活用
主に作業療法士が担当することですが、福祉機器や道具を使うことで介助量の軽減を図ったり、動作の自立を図る手段です。
患者さんの症状や動作の特徴などを評価しながら、適切な道具や機器の選択を行います。
作業療法士の腕の見せ所かと思いますので、ぜひあなたの病院の作業療法士さんにご相談ください。
介助方法の変更や、変化に合わせた介助量の軽減
病棟での患者さんの生活の状態をもっとも把握している看護師さんが最もその能力を発揮できる部分がこれではないでしょうか?
看護師さんの業務の多忙さは理解していますが、
「介助したほうが時間がかからないから、ADLすべて介助でさっさと終わらせる」
このような対応では患者さんのADL能力は改善しないと思います。かといって、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが指定するような介助方法はかなり時間のかかる場合があります。リハビリスタッフほどにはマンツーマンで対応できる時間がない看護師さんにとっては、業務の効率化を図りつつも、患者さんの能力に合わせた介助方法を選択する必要があります。
カンファレンスで理学療法士や作業療法士、言語聴覚士から患者さん状態などを確認し、より効果的な連携をとれるような工夫が必要です。
その為には積極的に看護師さんから、リハビリスタッフへ情報を発信し
- 今現在最も力を入れて改善を図るべきADLは何か?
- 介助量を減らし、患者本人に実施してもらうべき動作なにか?
ということを、病棟サイドの業務量と勘案しながら、看護業務に取り入れていくべきだと思います。
まとめ
回復期リハビリテーション病棟での看護師の役割
- ADLへの関わりが中心、まずはADLをきちんと評価する
- 看護とリハビリで病棟でのADL改善や介助の「落としどころ」を設定する
- リハ場面での患者さん能力を把握し、病棟での支援に生かす
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