リハビリテーション看護のことを書いているシリーズの第10弾は、動作分析を取り上げてみます。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士にとってはなじみのある用語なのですが、看護師さんにとってはきいたことがないって方も多いのではないでしょうか?特殊な用語ではありません、読んでそのままの意味で「患者さんの動作を分析すること」ということです。そんなことを書いてみました。
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動作分析をする事の意味
リハビリテーション看護のシリーズ記事ではいくつかのADL動作も取り上げているのですが、お読みになっている看護師さんや理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の方の多くは、介助方法やアプローチの具体的な回答を求めているのではないでしょうか?
残念ながらこのブログには具体的なHow toを書いてはいません。患者さんの症状というのは一人ひとりさまざまに異なっているので、そのすべての状態に共通するような、都合の良いHow toはないのです。100人の患者さんがいれば、100のパターンのアプローチが必要となるのです。
だから、「これさえやっておけば大丈夫!」っていうようなアプローチは非常に少ないのです。
だからこそ、患者さん一人一人の動作をしっかりと観察して、分析することが重要となってくるのです。そしてその動作分析に基づいて、一人一人の患者さんに会った取り組みやアプローチが必要となってくるのです。
動作分析には二つの視点があります。
- 患者さんが遂行しているADLなどの動作の分析
- そのADL遂行に必要な正常な動作の分析
たとえば、更衣動作。上着の着替えが上手に遂行できない患者さんに対して、いったいその更衣動作のどの部分でつまづいているのかってことを分析するためには、正常な更衣動作がどのような運動で行われているのかってことをしっかりと把握していなければなりません。
患者さんの動作と、正常な動作を比較することで、何が一体問題なのかってことが明らかになっていくのです。
患者さんが遂行している動作の分析
動作の分析というと、運動機能に関しての観察が中心になりがちですが、本当は運動機能だけではなく、視覚や触覚といったような感覚機能や、動作の遂行手順が適切かどうかというような高次脳機能なども関連してきますが、ここでは運動機能面に着目して述べます。
更衣動作、食事動作、排泄動作というような、1人で遂行することができないADL動作ってけっこう病棟ではたくさんあります。そのそれぞれの動作について、観察して分析することが必要です。
患者さんは動作のどの部分で、つまずいていたり遂行が難しかったりしていますか?
上肢の動きでしょうか?下肢の運動でしょうか?
患者さんそれぞれで問題となる部分は異なっていますので、それぞれに対応した支援が必要となってきます。画一的な支援ではその患者さんに適切な支援とは言えないのです。
つまずいている部分の動作
動作の遂行を妨げていたり、できない部分がある事が、動作分析をすることで明らかになります。
ではその部分の動作を改善するためにどのような支援をすることが必要なのでしょうか?
- 代償動作で補う
- 福祉用品や自助具などで補う
- 介助することで支援する
色々な支援の方法があるのですが、どのような支援が適切であるかということを考えるには動作分析を行う事で、遂行する動作のどの部分に支援が必要であるのかということを明らかにしなければなりません。
更衣動作を一人で行えない
という患者さんはたくさんいますが
- 袖を通すことができない
- 更衣の手順がわからない
- バランスが不安定で座位を保てない
どの部分につまづいていて動作が遂行できないのかによって支援の方法は異なってきます。
袖を通すことができない患者さんであれば、袖の部分だけを介助すると他の動作を行う事はできるかもしれません。
バランスが不安定で更衣ができない患者さんは、バランスを介助すれば着替えることができるかもしれません。
出来ない原因によって、支援の方法が変わるので分析することが必要なのです。
正常な動作の分析
患者さんが困っている動作を分析するには、正常な動作の分析をすることが必要です。
自分たちが正常にできるってことは
- どのように動作を遂行しているのか?
- どんな手順で行っているのか?
- 手や足をどのように動かしているのか?
そんなことを、しっかりと把握しておく必要があります。正常な動作をしっかりと分析して把握しておくからこそ、患者さんがどの部分でつまづいているのかってこと知ることができるのです。
また、正常な動作には多くのバリエーションがあります。
ベッドから起き上がるという動作でも、いろんな起き上がり方があります。
どの起き上がり方が正しいっていうものではないのです。
いろんな起き上がり方があって、その起き上がり方が生活を遂行するのに問題がなければそれでよいのです。
だから、画一的な指導ばかりを患者さんにしていてはいけないのです。
多くのバリエーションからその患者さんにあっている動作を支援することが大事になってきます。
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