実践!リハビリテーション看護7 関節可動域訓練のこと


病棟や訪問系の事業所で、看護師が取り組むリハビリとして比較的実施されているものの一つが関節可動域訓練ではないでしょうか?

でも、私が看護師さんとかかわった中で、関節可動域訓練とストレッチとを混同されている方もいましたので、簡単にまとめてみました。わかりにくい場合は、担当の理学療法士や作業療法士に相談してみてください。

関節可動域を「ROM」と表記することが多いのですが、読み方は「あーるおーえむ」です「ロム」ではありません。世界保健機関はWHOと表記しますが、「だぶりゅえいちおー」と読みますよね、「ふー」とは読まないでしょう。だから間違えていたなら「あーるおーえむ」と読むようにしましょう。

ここでは関節可動域訓練の基本的な考え方の一つを書いています。
2017年11月7日に追記しました。

関節可動域訓練

関節可動域を維持、拡大するってことを目的に行っているのが関節可動域訓練です。

関節がしっかりと動くようにするってことですよね。何らかの疾患が原因で「不動」、関節を動かさない期間が続くとさまざまな原因によって関節の可動域は減少します。

そうならないように関節を動かすことが必要なんですね。

ストレッチ・ストレッチング

筋肉が固くならないように、柔軟性を保つために行うのがストレッチです。わかりやすく言うと筋肉を伸ばすってことですね。

筋肉を動かすことで筋の伸張性を保ちます。筋の伸張性を保つことが、結果的に筋によって可動している関節の可動域を確保することにつながります。

関節可動域訓練=ストレッチではありません

ストレッチを行って筋の伸張性を保つと関節の可動域を保つことが可能です。しかし、関節の可動域を制限する要因は筋の伸張性の低下だけではありません。

ストレッチをするという事と関節可動域訓練をすることはイコールではないのです。

筋肉には単関節筋、二関節筋、多関節筋などがあります。筋の起始と停止の間ににいくつ関節が存在しているのかってことによって区分した分類です。

ひとつの関節に筋が一つしかなければ、筋をしっかりとストレッチすることが関節可動域の改善に役に立つのですが、人間の体の構造はそのように単純ではないのです。

ふくらはぎのストレッチと足関節

下肢を前後に開いてふくらはぎのストレッチをするポーズってありますよね。後ろの方の足の膝をしっかりと伸展しておけばふくらはぎが伸びていることがわかります。

ふくらはぎの筋肉をストレッチするポーズとしてよく知られています。

寝たきりの患者さんの場合だと、臥位の状態の患者さんの足関節を背屈させると、ふくらはぎをストレッチすることができます。

でもこの時、膝関節を90度、股関節も90度くらいに曲げて患者さんの足部を背屈させた方が、足関節をより背屈させることができます。

膝関節を屈曲位にすることで、ふくらはぎの筋肉が緩んだ位置になり足関節を背屈させやすくなるのです。

でもこのポジションでは足関節は動かしやすくなりますが、ふくらはぎの筋をを十分にストレッチすることはできません。

筋肉が突っ張ってしまうと、関節の動きを妨げる

二関節筋や多関節筋は筋の走行によっては、看護師や介護職に方が他動的に関節をしっかり動かそうとすると、筋肉が突っ張ってしまって十分に関節を動かせないことがあります。

そんな時はつっぱている筋肉が緩みやすい位置に肢位や姿勢を変えることで、動かしたい関節の可動性を引き出すことができます。

たとえば手関節の掌屈を例にとると

手をグーにしたまま手関節を掌屈するのと、てをパーにしたまま手関節を掌屈するのとでは、どちらの方がより掌屈が可能になりますか?

多関節筋の影響により、一般的には手をパーにしたままのほうがより掌屈します。

ストレッチ?可動域訓練?どっちが目的なのか

筋をストレッチをすること、可動域訓練をする事、どちらも病棟の看護師さんがかかわることのできるリハビリテーションの一つだと思います。

しかし、筋のストレッチが関節の可動域訓練ではないのです。

関節がしっかりと可動域の範囲すべて動くには、筋が緩んでいるほうが都合がいい場合もあるのです。

あなたが行おうとしているのが、筋のストレッチなのか、関節可動域訓練なのかによって、運動の仕方というものは変わってきますので、病棟で自主トレとして取り組むのであれば、担当の理学療法士や作業療法士と十分に話し合ったうえで実践するほうが良いと思います。

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