実践!リハビリテーション看護の5回目は「更衣動作」を取り上げてみました。食事も毎日ですが、更衣も毎日行うADLの一つですよね。「更衣動作」の評価のポイントや支援の工夫について書いてみます。
いつものことですが、看護師の嫁を持つ作業療法士の立場から書いておりますので、教科書とは少し違う視点でまとめています。
※2017年11月2日に追記しました。
更衣動作の観察すべきポイント
- 更衣しているときの姿勢
- 上着なら座位のバランスと、上肢の動き
- ズボンなら、立位(または座位)のバランスと上肢の動き
大きく分けるとこの3つの過程に分けて評価するほうがわかりやすいかと思います。
「リハビリテーション看護4 食事のこと」と最も異なる点は、食事とは違い、大きく体が動く動作が伴いますので、座位にしろ立位にしろバランスの安定性が必要となるADLであるということです。
車いすを利用している患者さんでも、座位バランスが安定していれば上着の着脱をスムースに行える人は多いですし、手すりなどを利用して立位をとることができる人なら、ズボンの着脱が自立している方もいます。
とくに、ズボンの着脱が自立するということはトイレ動作の自立へと繋がりますので、更衣動作への支援は病棟では重要になってくるのではないでしょうか?
1、更衣をしているときの姿勢
- 車いすで更衣をする場合
- ベッド上の端坐位で更衣をする場合
臥位で着替える場合もありますが、回復期リハ病棟では座位で着替えることが多いと思います。その場合、背もたれがあったりして周りが囲まれている車いすのほうが座位は安定しますが、背もたれなどがあって着替えにくくなります。
ベッド上端坐位では、周りに動きをさえぎるものがありませんので着替えはしやすいのですが、もたれたりするものがありませんので、安定した座位バランスが必要とされます。
2、上着を着がえるときの座位バランスと、上肢の動き
片麻痺患者さんの場合、上肢の動きで最も難しいのは、やはり麻痺側上肢へ袖を通したり、袖を抜いたりするという事ではないでしょうか。
発症前と同じ動作では着脱することができませんので、麻痺側の動きに合わせた上肢の動きが必要とされます。
麻痺側の上肢を安定して使うためには、座位バランスが安定する必要があります。バランスが不安定になればなるほど麻痺側上肢の動きは制限されてしまいます。
- 車いすで着替える
- ベッド上端坐位で着替える
どちらの場合も、
- 3分~5分程度座り続けられる
- 前方におじぎをするような姿勢をとることができる
- おじぎの姿勢からまた元に戻ることができる
この動作のいずれかに不安定な要素があるようでしたら、介助もしくは監視が必要となります。
食事動作では、車いすからずり落ちて転落するというような危険は少ないのですが、更衣動作はバランスが不安定だと車いすやベッドから転落する危険性があります。その危険を避けるためにはバランスの確認が必要となってきます。
3、ズボンを着換える時の立位(または座位)バランスと上肢の動き
上着は座位のまま着替えることが可能な動作ですが、ズボンの着脱は「お尻を浮かせる」必要があります。その為には、立位をとらないとズボンを脱いだりはいたりすることができません。
(臥位の状態でお尻の部分を脱いだり着たりすることも可能です)
そのため、上着の着脱よりも高いバランス能力が必要とされます。
- 立位でつかまるものがなくてもバランスを保てる
- 何かにつかまればバランスを保持できる
- 壁などに持たれていればバランスを保持できる
バランスの程度によって対応の仕方は異なります。
安全のために、立位をとるのはお尻の部分の上げ下ろしだけで、ズボンを足に通したり、足からズボンを抜いたりするときは座位で行う事が一般的です。
看護師さんが病棟でできる支援
更衣は朝起きたときと、就寝前や夕食後に行う事が多いと思います。とくに、朝起きたときの更衣は看護師さんが最も手薄な時間帯となります。そのため、時間のかかるような介助をするよりも、全介助でパッパッと済ませたほうが時間の節約になります。
そのことが、良いかどうかはそれぞれの回復期リハビリテーション病棟での看護師や介護職員の人員配置によって左右されますので、このサイトでは白黒つけません。
ただ、患者さんの退院に向けて更衣動作、特にズボンの着脱の自立はトイレ動作の自立につながりますので、患者さんの退院に向けての目標に応じて、更衣動作に重点を置いて支援をする必要のある人をピックアップするなどの手順を踏めば、少ないスタッフ数でも対応できるのではないでしょうか?
1、上着の着脱への支援
その患者さんが上着を着ることのできない原因はなんでしょうか?
- 上肢の操作性の問題
- バランス能力の低下の問題
- 手順などの理解の問題
など、原因によって支援の方法というものは変わります。画一的な支援では患者さんの能力は改善しません。
上肢の操作性に問題があれば
- 麻痺側の動きをサポートする
- 上着の把持を介助する
- ボタンのみは介助して、そのほかの動作は自力で行ってもらう
など、支援のポイントを絞って介助したほうが効率的ではないでしょうあ?
同じようにバランス能力が低下している場合も
- 車いすで行う事でバランス低下を補う
- ベッド端坐位で行うときは転倒しないように見守りで行う
など、その患者さんのバランス保持能力によって支援の方法は異なってきます。
2、ズボンの着脱への支援
上着と同じようにズボンを着脱できない原因を分析することで、その患者さんに必要な支援を行います。すべてを手伝うような画一的な支援が効果的というわけではありません。
立位でのバランスに問題がある患者さんであれば
- お尻を通す部分のみは介助する
- 脱衣は介助で行うが、着衣のみは立位を介助するだけで行う。
というように、必要な支援を選択することが重要となってきます。
脳卒中の患者さんへの支援のむずかしさ
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士への講義でも常に質問されることですが、
- 「○○な状態の患者さんにはどのように支援すればよいですか?」とか
- 「講義の内容が、漠然としてピンポイントではないです」とか
- 「もっとHow to が知りたいんです」
というようなご質問や意見を講義をすると伺います。骨折患者さんや、脊髄損傷の完全麻痺患者さんなど、ある程度、定型的な症状示す疾患、病態像が同じような疾患の場合は、いわゆる「How to」を指導しやすいのです。
しかしながら、脳卒中という病気は同じ疾患名であっても、その症状がバラバラで、一人一人の患者さんが抱えている問題が異なり、その支援の方法もなかなか固定化したものがないのです。
だから、ここに書いている内容も漠然としたものとなりがちです。(申し訳ありません)
支援の考え方や方向性は示すことが出来ても、具体的になりにくいのです。
ですので、それぞれのADLの評価のポイントや、評価すべき視点についてはお伝えできるのですが、実際の支援については基本的な事柄を述べることはできますが、具体的なものはその患者さんを見るしかお伝えできないのが現状なのです。
まずは、評価のポイントをしっかりとみるようにしていただいて、問題を把握して、それぞれの支援の方法を探ってみてください。
実践!リハビリテーション看護4 「更衣のこと」 まとめ
- 姿勢、上肢機能、バランス機能などポイントに分けて評価する
- 観察で得られた情報をもとに、それぞれのポイントに応じた支援をする
- ズボンの着脱は、トイレ動作の自立の第一歩となる
- 少しずつの積み重ねで改善することを狙う
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