実践!リハビリテーション看護2  「脳血管疾患という病気のこと」


リハビリテーション看護の対象となる疾患はさまざまですが、もっとも多い疾患といえば脳血管疾患ではないでしょうか?脳梗塞や脳出血などですね。筆者も作業療法士としてこれまで見た疾患で最も多いのは脳血管疾患です。これをお読みの看護師さんは脳血管疾患についての特徴や病態については研修会や教科書などで学んでおられると思いますが、脳血管疾患のリハビリテーションについての学びは十分ですか?

骨折の患者さんへの対応と脳卒中の患者さんへの対応はまったく異なるってことを理解しないと、適切なリハビリテーション看護は実践できません。

※2017年10月27日追記

半身が動かなかくなるって言う事

「片麻痺」って表現を脳血管疾患ではよく使いますよね。読んで字のごとく、体の半身が麻痺した状態ですよね。だから、反対側はきちんと使えるのではなかと、勘違いしている看護師さんは多いと思います。じつは、片麻痺の患者さんの麻痺側とは反対側の上下肢はまったく問題がないと勘違いしている理学療法士や作業療法士、言語聴覚士もいるんです。

だけど非麻痺側が正常に動くというわけではありません。

「麻痺」という表現だけど

片麻痺っていうけど「麻痺」って聞くと

  • 「弛緩性麻痺」のように全く動かなくなる
  • ブランブランな状態

みたいなイメージを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか?

脳卒中による片麻痺というのはそのようなブランブランな状態だけではありません。

随意運動が可能な患者さんもいるし、逆に動かそうとしても自分の思い通りに動かすことができない患者さんもいる、全く動かせない患者さんもいます。

一口に片麻痺といってもその病態像は患者さん事によって全く異なるのです。

「片麻痺」って聞くと半身だけが問題のように考えてしまいがちなのですが、実はそうではないのです。脳卒中で片麻痺の状態になるのは、あまりありえませんが、半身だけ骨折(たとえば右上下肢の骨折)した患者さんとは違うのです。

半身だけ骨折している患者さんの場合、骨折していないほうの手や足はスムースに動かすことができます。

しかし、脳血管疾患のかたの場合は麻痺していないほうの手や足でさえスムースに動かすことができないのです。麻痺している側の手や足の状態が影響していて、麻痺していない方の手や足ですらスムースにに動かすことができないのです。

手や足は、右と左の区別がつきますが、体幹とか首とかってなると、どこまでが右でどこから左なのかって区別もつきにくくなりますしね。

だから、片麻痺って言う表現にとらわれないようにしてください。脳卒中というのはどちらか一方だけが悪くなる病気ではなく、全身的に影響の出る病気なので、

左片麻痺って言うのは、左側の上下肢の症状がより重いだけであって右の上下肢に全く問題がないというわけではないのです

まず観察してみてください

患者さんはこれまでの人生で、60年とか70年とか右と左が正常に動いてあたり前の生活を営んでいたのが、ある日突然脳卒中によって、片側の動きが悪くなる。

片側の動きが悪い状態で生活をしたことがないので、本来動きが良いほうの反対側の上下肢もうまく使いこなせないのです。

あなたが担当している患者さんの、麻痺側ばかりを観察するのではなく、非麻痺側の上下肢の動きも観察してみてください。

  • 非麻痺側の上下肢に力が入りすぎている
  • 非麻痺側なのにスムースに動かない
  • 介助すると、非麻痺側にものすごく力が入っている

というような障害像を示す患者さんがたくさんいることに気付くのではないでしょうか?

そんな患者さんに対して

  • もっとリラックスしてくださいよ
  • もっと力を抜いてくださいね

って言うようなアドバイスや声掛けをしていませんか?

力を抜いたり、リラックスしたりすることができるのであれば、患者さん自身でとっくにそのようにしますよ。そういったことができないことが問題なのです。

だから、そんな障害像を示している患者さんに「力を抜いてくださいね」って言ってもできません。そのあたりが骨折のような整形疾患と異なるのです。

リラックスできないのはリラックスできない理由があるのです。

環境を整えてあげることが重要

脳卒中の患者さんが、非麻痺側の上下肢をスムースに動かすことができるようになるには、動かしやすくなるような環境を整えることが重要になります。リラックスできないならリラックスしやすくなるような関わりをするということです。

この場合の環境というのは

  • ベッドや車いすのポジショニング

というようなものだけではなく

  • 介助方法
  • 視覚的な環境

というその人を取り巻くいろんな環境が影響を与えるのです。

  • 声掛けのタイミング
  • 左側から近づくのか、右側から近づくのか
  • 廊下の真ん中にいるのか、壁際なのか

というようなことも場合によっては患者さんの動きに影響を与える可能性があります。

脳卒中という病気には、このような特性があり、同じ病名であってもその症状や障害像は千差万別であるということを理解することから、脳卒中のリハビリテーション看護は始まるのです。

脳卒中という病気のこと まとめ

  • 脳卒中という同じ病名であっても その症状は一人ひとり異なる
  • 片麻痺って言っても片側だけが悪いのではない
  • 片麻痺という障害名にとらわれることなく、全身をケアする必要がある
  • 環境の変化が患者さんに与える影響は非常に大きい

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