実践!リハビリテーション看護としてシリーズ化して書いていますが、今回は「食事」動作のことを書いてみます。いつものことながら、教科書的なことではなく、回復期リハビリテーション病棟で働いている看護師の妻を持つ、作業療法士という視点で書いております。
食事動作の観察すべきポイント
看護師の皆さんは食事に課題のある患者さんの支援にあたるときに、どのようなポイントを評価していますか?
食事の摂取量?嚥下のこと?まあ、いろいろあると思うのですが、少し整理して考えてみましょう。食事の動作に関してみるべきポイントは
- 食事しているときの姿勢
- 上肢を中心にした、食べるときの動き
- 口の中の動きや嚥下
大きく分けるとこの3つの過程に分けて評価するほうがわかりやすいかと思います。リハビリテーションに関わる作業療法士から見ると、病棟で患者さんが食事をしているときに、看護師さんから報告してほしいような内容もこの3点に分けて状況を報告してもらえたら、うれしいからですね。
1、食事をしているときの姿勢
いい姿勢で食事をするためには、環境の調整が重要になってきます。
特に脳卒中の方の場合は、左右への傾きが見られる場合も多く、食事に適さない姿勢になりやすいことが多い。
- 体幹の左右や前後への傾き
- 下肢、足底のポジション
- 頭部の傾き
等がどのような状態になっているのかを観察しましょう。
2、上肢を中心とした、食べるときの動き
姿勢が安定していても、上肢の動きに問題があれば、やはり食事動作はスムースに行うことができません。
- すくう、さす、つまむなどのスプーンや箸の操作をしている手指の動き
- 食べ物を口に運ぶまでの上肢の動き
- 口に入れるときの手の動き
などの動作が、上肢を中心とした食事動作での評価のポイントとなります。
姿勢に問題があっても、上肢の動きが良好であれば、ポジショニングで姿勢を整えることで食事動作が改善することもあります。
姿勢が不安定で上肢の動きに問題が出ているのか、上肢の動きそのものに問題があるのかということでは、対応の仕方は異なってきます。
3、口の中や嚥下のこと
嚥下というと、言語聴覚士まかせになっている職場も多いのではないでしょうか?
でも、言語聴覚士って言うのはどこの病院でも少数派ですから、病棟でなかなか連携できないものです。まずは看護師さんが食事の状態をきちっと評価することが必要です。
口の中の動きについては
- 口唇の動き
- 舌の動き
- 下顎の動き
- 嚥下
を分けて観察することが重要です。口唇・舌・下顎ってバラバラに動かせるってご存知ですか?
下顎の動きというのは咀嚼活動(噛む動き)に必要ですが、しっかり噛むことができても、口唇を閉じることができなければ咀嚼したものが口からこぼれてしまいます。
口唇をしっかり閉じることができても、下顎での咀嚼が弱ければいつまでも飲み込むことができません。
舌の動きが悪ければ、口中の食べ物を左右の奥歯に送り込んだりすることができず、咀嚼を妨げることになります。
食べこぼしが多い、いつまでも飲み込めない、むせが多い、などなど、口の中のトラブルはどの段階で生じているのかってことをきちんと見極める必要があります。
看護師が病棟でできる対応
姿勢に問題があったり、上肢の動きに問題がある場合は、担当の作業療法士と連携をとってほしい。
しかし、今現在問題があるわけですから、作業療法士のリハビリの時間で患者さんの能力が改善するのを待っているといつまでも患者さんの食事動作は改善しませんよね。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がマンツーマンの治療で患者さんの能力を改善するまでのあいだ、病棟でそのまま放置しておくわけにはいきませんよね。
今すぐできる対応としては環境を整えることです。患者さんの能力が同じであっても環境調整することで動作が改善することがあります。
座位姿勢を整えるような支援
- 両足はきちんとついていますか?
- 体は左右前後へ傾いていませんか?
- 車いすのサイズは適切ですか?
- テーブルの高さは適切ですか?
このようなポイント中心に支援を考えましょう
車いすや椅子姿勢を適切にする
車いすのサイズを適切なものに交換する、クッションなどを用いて座位姿勢を整えることはすぐに支援できることです。
また片麻痺の方の場合、片手片足駆動で車いす操作をすることも多いため、麻痺側の足はフットレストに乗っていて反対側の足は床についているってパターンが多い。そうすると体が傾きやすくなることになります。両方ともフットレストにのせる、両方とも床におろすというような対応も検討してみましょう。
テーブルの高さや位置を調節する
- 椅子や車いすとテーブルとの距離は適切ですか?
- テーブルの高さは適切ですか?
ちょっとした調節をするだけで、食べやすさは改善します。テーブルの高さが低い場合は、食事のお膳を台の上に乗せるなど工夫できることはないでしょうか?
上肢の動きに問題がある患者さんの支援
姿勢が良くなっても上肢の動きそのものに問題があればうまく食事することはできません。
お膳の位置の調整、スプーンや箸などの食具を使いやすいものに変更するといった支援になります。
お盆の上に載っている、お皿や茶碗の配置ってどの病院でもだいたい決まっていますよね。
でも、右片麻痺の患者さんと、左片麻痺の患者さんとでお皿の配置が同じだったら食べにくさは変わってくるのではないでしょうか?少しの変更で、食べやすさって変わってきます。
また、半側空間無視のような高次脳機能障害を抱えているような患者さんの場合も、食器の配置により食事動作が改善することもあります。
お膳を配置するときのちょっとした工夫が必要になってきます。
スプーンの柄を太くしたり、スプーンの先端部分の角度を変更したりすることも有効な場合があります。
口の中に問題がある患者さんの支援
なかなか改善しない場合は、言語聴覚士さんに相談してみましょう。
下顎の動きや口唇の動き、嚥下に問題がある患者さんの多くは、食事動作を介助してもらっていることが多いと思います。看護師さんが病棟でできる取り組みとしては、介助の仕方を工夫してみてはどうでしょうか?
- 介助で口に入れるタイミング、間隔を変えてみる
- スプーンにのせる食事量を変えてみる
- 口の中に入れる場所を変えてみる(中央、奥歯の方なのか)
いつもと同じ介助方法では、いつもと同じ結果になってしまいます。
少しでも患者さんが咀嚼しやすい、嚥下しやすい状態になるにはどんな介助方法が適切であるのかということを考えながら支援しないとなかなか状態は変化しないと思います。
病棟できる支援は、その病棟の看護師さんの人数や、患者さんの入院数、患者さんの重症度合などによって変化するものです。常に患者さんに寄り添うことができない場合もあると思います。
でも、看護師さんは24時間支援できる職種なのです。看護師さんが患者さんに関わるほんの少しの時間だけでも毎日繰り返すことで大きな変化につながることがあります。
大変な作業ではなく、少しのことでも繰り返すことで改善する可能性について考えてみてください。
実践!リハビリテーション看護4 「食事のこと」 まとめ
- 姿勢、上肢機能、咀嚼・嚥下などポイントに分けて評価する
- 観察で得られた情報をもとに、それぞれのポイントに応じた支援をする
- 病棟での支援が困難であれば担当のセラピストに相談する
- 少しずつの積み重ねで改善することを狙う
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